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廃ビルプロジェクト

廃ビルが出来上がる経済的な構造はよく知らないけど、間違いなくベルリンは廃ビルが似合う街だ。退廃的な建築の隙間からノイズのように表出しているグラフィティは、もはやこの街のシンボルである。実際、数少ない観光地であるベルリンの壁も"グラフィティアート"を売りにしているようだし、砕け散った空き瓶、吸い殻とセットで誰もいなくたってストリートはいつだって賑やか。

 

たまたまネットサーフィングしてたときに、BERLIN ART BANG (http://www.thehaus.de/) ってイベントを知る。THE HAUSというかつてミュージアムであったビルが取り壊されるらしく、クロージングパーティーとして開かれるのだとか。二ヶ月間限定で、投げ銭制らしい。しかも、人数を制限しながら入場させてるためめちゃめちゃ並ぶらしい。すごく気になったので空き時間を見つけて行ってみたのだった。

 

THE HAUSがあるのは、ZARAとかユニクロが並ぶ商業的なショッピング街の中。正確な位置を把握せずに行ったのだが、一発で場所はわかった。日本人でもこんなに並ばないだろっていう列。周辺のホテルやショップは大迷惑だろうなと思ったのだが、そのバンダリズム的スピリットがグラフィティに通じているのかもと深読みしてみたり。

 

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というか深読みさせるぐらい待たされて、結局1時間半くらい待った。4月は天候が不安定で、この日は雪が降ったり、晴れたり、急に強風が吹いたりで、まぁとにかく寒くて、それは時間以上に長く感じたのだ。

 

ようやく入り口の手前くらいまできて、白い袋を渡される。塞ぎ口にはべっとりと糊がついていて、スマホをしまえということらしい。ようは撮影禁止。なんともベルリンらしいシステムだと思わず笑ってしまった。でも、SNS上の写真の拡散なくしてここまで人を寄せ付けるのは簡単なことではないはず。同時に関心する。

 

webサイトの感じからしても、もちろんタイトルからしても、グラフィティアーティストが占拠しているということのみしか知らなかったので、実際に中を見てみて驚いたのは、普通に彫刻や、インスタレーション的なものも普通に"展示"してあったことだった。むしろ、それこそ美大の学内でやる卒展に近くて、それぞれの(ホワイトキューブでない)部屋としての空間を各々が、塗るなり、壁を作るなりで工夫してそれらしく見せている点など、まさしくである。手荒な感じもそれを想起させたのかもしれないけれど、ほどよいDIY感が五階建てのビルを包んでいた。名刺も置いてあったし。

 

でも、メインはやっぱりグラフィティで、廊下やトイレなど塗られてないところを見つけるのが困難なほどに埋め尽くされている。肝心の作風だが、僕はそこまで詳しくないのであまりわからないけれど、わりとオールドスタイルだったのかも。WILD STYLEの頃のブルックリンの感じ。ちょっとノスタルジックな哀愁があるように感じた。わからない、見る人が見れば違うのかもだが。

 

帰りに、登った階段を下り、一階に降りてきたとき、物販を見つけた。分厚くて黒い本はこのイベントの記録集らしい。ちょっと欲しかったので、値段を聞いてみたら売り切れなのだとか。確かにSOLD OUTと小さく書かれていたけれど、だったら置くなよ。2ヶ月ある会期のうちまだ折り返しすらしてないこの時期に売り切れるとはやっぱり予想以上の反響なのかな。ベルリンにはこういうよくわからんイベントが多いなぁ。

 

ギャラリーのオープニング

人見知りで、何かのイベントで知り合うというよりも、友達を通して、作ったものを通してという繋がり方が多い僕にとって、ギャラリーのオープニングとかは本当に苦手で、だからこそベルリンにいる間はとにかく行きまくろうと思っていた。

何回か行った中で感じているのは、どこに隠れてたんだってくらい人が溢れてて、めちゃめちゃ賑やかだということ。でも、土地柄なのか、正装してる人はいなくて、ぼろぼろの服を着て、ワイン片手に話してたりする。靴に穴が空いている僕でも安心だ。あと書斎が楽しい。勉強になる。

でもやっぱり、人がとにかく多いから作家がどのおっさんなのかわからないし、知り合いと行かずに一人で行った暁にはタダ酒飲んでそのまま帰るというなんとも寂しい結末になりかねない。

何回かそんな経験をしていたので、そろそろ作家さんとかと話したいなぁと思っていた頃に、DAMというデジタルアートのわりと有名なギャラリーがとある作家さんの個展をするということを知る。CGツールを駆使して作った映像を、ディスプレイで絵画的に展示している作家さんで、個人的に関心が高い分野だったので、興味のない分野など基本的にないのだけれど、当然のごとく行くことにした。

そういうイベントは基本的に週末の金曜、たまに土曜にやっていて、こちらの週末の夜はカオスなので楽しいので起きているのだけれど、あまり早く行き過ぎても溢れかえっているだろうということで、閉まる時間が少し過ぎたころに行ってみた。

予想は的中で少しの人しかいなくて、こういうことかと納得。オープニングは終わり際に行くに限る。展示の内容も作品も良くて、作品集みたいなのも購入した。こちらでのカルチャーショックはたくさんあるのだけれど、そのうちの一つが書籍の安さ。この時買ったものも結構な冊子で600円くらい。アートブックも大幅に値引きされてたりするし、写真集とかだと陰部丸出しなので結構楽しいので集めている。これもいつかまとめたい。

作家さんと二人だけで話すこともできて、アジアのデジタルアート事情とか、今後どうするの的な相談とか。就職したら作品を作る時間がなくなるから働くのは良くないと言われたり。

基本的に夜中にスナップを撮りにいくときも、こういうイベントに行く時もほろ酔いだと調子いいので、この時もイタさ大爆発で自分の作品を見せて感想もらったり。でも文化なのか長尺の映像も普通に真剣に見てくれる。もっとプレゼン体制を整えていく必要があるのかもしれないけれど、すごくいい経験だった。別にイタいことでもないんだなと。オープニングだと展示作家を中心として話が広がっていくような感じがあるけれど、なんか普通に一対一で話してくれたのが嬉しかった。

C4Dもクラックして使っているらしいし、元カノが韓国人だったらしいし普通に会話としても楽しかったので、こういうのもっと経験したいなぁと思った。

あとZineと名刺を渡せたのもよかった。手土産はあるだけ得だと感じる。最近とても。

 

 

 

 

 

ロンドンのZineイベント

せっかくヨーロッパにいるのでそろそろ放浪でも始めようかと画策していたときに、偶然にもロンドンでZineのイベントがあることを知った。詳しく見てみると、まだ出展者の申し込みを受け付けている。自分の作品の性質上、ポートフォリオを持ち歩いたところでほとんど伝わらないだろうし、出国前、何か名刺代わりになるものをということで、大量にZineを作ってはいたのだけど、まさかこんなすぐに出番がくるとは思ってもみなかった。フォームを送って、2,3週間後くらいに参加できるとのメールがきたので、そのまま一泊13ポンドの安宿とeasyJetをブックした。というのも、Tateの新館ができたり、Wolfgang Tillmanの企画展がやっていたりと少しだけ僕の中でロンドンがアツくて、そのついでにちょうどいい部分もあったから。

 

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参加したZine Worldというイベントだけど、そもそもロンドンは移民だらけの都市なので、ワールドと言いながらも、国際的なZineが集結!!!というわけでもなく、アートスクールに通う学生からガチのパブリッシャーまでロンドンを拠点にしてる人が各々に出展してるという感じで、神宮前でやってるTOKYO ART BOOK FAIRの1部屋分を切り取ったみたいに思ってもらえるとわかりやすい。図書館のスペースみたいなところが使われ、飲み物や軽食も売っていて、和やかにわいわいしてる感じでそこらへんに別段、カルチャーの違いを感じることもなかった。ただやっぱり欧米特有のZine文脈はあって、日本における、Zine≒アートブックな認識からすると少し奇妙だけど、毒々しいアメコミや日本の漫画みたいなもの、あとはメタルやパンクのバンド文化と大きく絡んでいるものなど、同じZineという呼称が使われている。これらは元祖Zineの80年代の感が漂っていてなかなかおもしろいし、嫌いじゃないんだけど日本ではあんまり見ないタイプだなぁ。日本はスイス系のZine文化だからなのかも。ベルリンでもZineを扱う書店などに行くと感じるけど、おもしろいことにこれら完全に住み分けがなされていて、一つの書店に同居している例をまずみたことがなかったりする。そんな中、今回のイベントで、1つだけそんなオールドスタイルの出展があって、僕には彼が浮いているように見えたのだけれど、他の出展者にはどう見えていたんだろうか。ベルリンでの住み分け方を見ていた僕からみたら少し違和感があった。

 

イベントに参加した趣旨の中に、自分の作ったものがどう評価されるのか道場破りのような部分もあった。他方でヨーロッパにおけるZineカルチャーがどうなっているのか、あとはどんな人たちが出展しているのか、もっと言えばロンドンにはどんなおもしろいやつらがいるのかみたいな興味もあった。というか後者の方が大きい。そう考えるとわりと幸運にも多分に収穫があったと思う。隣のポーランドから来ていたイカついおっさんは、Zine、雑誌あとはレーベルのオーナーでもあるらしく、CD、カセットを売っていた。色々聴かせてもらったが、いかにもロンドンらしいポストパンクやレゲエ系のもので、彼自身はその中でジャケットのデザインなども担当しているそう。器用というかエネルギッシュというか。そのおっさんのZineがおそらく会場内で一番売れていて、彼自身もこの手のイベントに慣れているように見えたので、色々聞いてみたら、いくつかロンドンで開催するおもしろいイベントについて教えてもらうことができた。

 

店番withビールなそのおっさんが酔い始めた頃に教えてくれたそのイベントの中には、DIY Cultureというものがあって、彼いわくそれがロンドンで一番規模がデカくておもしろいらしい。二番目は天下のGold Smithで行われるRadical Book Fairというから信用できる。ちなみにそのDIY Cultureというイベントだけど、どうやら実は、今回僕が参加したZine Worldと同じく、Sofia Niaziさんが主催しているイベントらしいことがわかる。Zine Worldは彼女の運営するOOMKが主催だったのだ。OOMKとはムスリムの女性によって運営されているマガジンのようなもの。彼女自身もイスラム教徒で、ムスリムの女性におけるステレオタイプを払拭するような意図で、流行のファッションに身を包んだムスリムの女性が表紙になっていたり、日本ではGINZAの紙面で紹介されたこともあって、ちょっとだけ有名らしい。現在はissue5まで出ている。記念に僕も購入したが、内容も充実していてめちゃめちゃおもしろい。しかもこのクオリティとこの量感で5ポンドというから驚いてしまう。製本が凝っていたり、リミテッドエディションと謳っては法外な値段で売られるアート系Zineを見てきた僕としては結構なショックだった。高額な本、Zineもそれはそれで確かに存在すべきジャンルだけど、OOMKのように自分たちのスピリット、思想を少しでも多くの人に伝えたいという情熱も、忘れかけていた僕にとってはかなり心揺さぶられるものだった。Niaziさんも見た感じまだ若くて、何よりとてもいい人だったので、手に取った紙の束から彼女の人柄がにじみ出ているようで感動したのだ。イベントについてさらに言えば、全体的に日本のように何となく作りました感がなかったのも印象的で、フェミニズムレイシズムをテーマにしたメッセージ性の強いものが明らかに多かった。それも彼女のセレクトなのか、もしくはそういう文化なのか、はっきりとはわからないが、そうであるなら5月に行われるDIY Cultureで確かめてみようと思った。どうやらDIY Cultureには正規の出展者とは別の誰でも売っていいですよコーナーもあるとのこと。時間とお金があれば飛び込みで参加できたらと思っている。しかし誰でも売っていいですよコーナー(free communal table)、何と彼女らしいセンスなのだろう。

 

以下興味深かった他の出展者の作品をいくつかまとめた。

 

これがOOMKのissue5。79ページもあって内容も濃い。

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BOLO Paperというイタリアの出版レーベルから、ケバブをモチーフにしたZine。ヨーロッパらしい独特のセンスがある。

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こちらはsubjectというイケてるアーティストを紹介したりしててかっこいいマガジン。現在issue3を制作中とのこと。

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隣に出展していたいかついおっさんのコラージュ。名前を聞き忘れた。本業はBLACK EYE PRESSというRISOプリントなどを行う印刷屋さんらしい。

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ちなみにこれがそのおっさん。

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これはElla Margolinさんの出展していたもの。友人だというAmy HyamさんのZineがとてもよかった。LESBIAN SEX POSITIONというタイトルのもの。文字通り様々な体位のドローイングが並ぶ。

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こちらもAmy Hyamさんの作品。modern fasionというタイトルで、このページではスポンジをサンダルにしている。mixed media具合が秀逸。

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これも彼女のもの。ポルノ写真の足首だけを切り取っているらしい。余白に想像力が生まれる。おもしろい切り口。

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そしてこれはStefan AlexanderさんのFULLMOONというコミック。物静かで気の弱そうな青年といった感じの方で、この手のコミックを数点出展していたのだが、すべてに作品において、何も起こらない。静かに物語が始まるかと思えば、特に何も起こらず終わるという不思議な構成のコミックだ。

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