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ロンドンのZineイベント

せっかくヨーロッパにいるのでそろそろ放浪でも始めようかと画策していたときに、偶然にもロンドンでZineのイベントがあることを知った。詳しく見てみると、まだ出展者の申し込みを受け付けている。自分の作品の性質上、ポートフォリオを持ち歩いたところでほとんど伝わらないだろうし、出国前、何か名刺代わりになるものをということで、大量にZineを作ってはいたのだけど、まさかこんなすぐに出番がくるとは思ってもみなかった。フォームを送って、2,3週間後くらいに参加できるとのメールがきたので、そのまま一泊13ポンドの安宿とeasyJetをブックした。というのも、Tateの新館ができたり、Wolfgang Tillmanの企画展がやっていたりと少しだけ僕の中でロンドンがアツくて、そのついでにちょうどいい部分もあったから。

 

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参加したZine Worldというイベントだけど、そもそもロンドンは移民だらけの都市なので、ワールドと言いながらも、国際的なZineが集結!!!というわけでもなく、アートスクールに通う学生からガチのパブリッシャーまでロンドンを拠点にしてる人が各々に出展してるという感じで、神宮前でやってるTOKYO ART BOOK FAIRの1部屋分を切り取ったみたいに思ってもらえるとわかりやすい。図書館のスペースみたいなところが使われ、飲み物や軽食も売っていて、和やかにわいわいしてる感じでそこらへんに別段、カルチャーの違いを感じることもなかった。ただやっぱり欧米特有のZine文脈はあって、日本における、Zine≒アートブックな認識からすると少し奇妙だけど、毒々しいアメコミや日本の漫画みたいなもの、あとはメタルやパンクのバンド文化と大きく絡んでいるものなど、同じZineという呼称が使われている。これらは元祖Zineの80年代の感が漂っていてなかなかおもしろいし、嫌いじゃないんだけど日本ではあんまり見ないタイプだなぁ。日本はスイス系のZine文化だからなのかも。ベルリンでもZineを扱う書店などに行くと感じるけど、おもしろいことにこれら完全に住み分けがなされていて、一つの書店に同居している例をまずみたことがなかったりする。そんな中、今回のイベントで、1つだけそんなオールドスタイルの出展があって、僕には彼が浮いているように見えたのだけれど、他の出展者にはどう見えていたんだろうか。ベルリンでの住み分け方を見ていた僕からみたら少し違和感があった。

 

イベントに参加した趣旨の中に、自分の作ったものがどう評価されるのか道場破りのような部分もあった。他方でヨーロッパにおけるZineカルチャーがどうなっているのか、あとはどんな人たちが出展しているのか、もっと言えばロンドンにはどんなおもしろいやつらがいるのかみたいな興味もあった。というか後者の方が大きい。そう考えるとわりと幸運にも多分に収穫があったと思う。隣のポーランドから来ていたイカついおっさんは、Zine、雑誌あとはレーベルのオーナーでもあるらしく、CD、カセットを売っていた。色々聴かせてもらったが、いかにもロンドンらしいポストパンクやレゲエ系のもので、彼自身はその中でジャケットのデザインなども担当しているそう。器用というかエネルギッシュというか。そのおっさんのZineがおそらく会場内で一番売れていて、彼自身もこの手のイベントに慣れているように見えたので、色々聞いてみたら、いくつかロンドンで開催するおもしろいイベントについて教えてもらうことができた。

 

店番withビールなそのおっさんが酔い始めた頃に教えてくれたそのイベントの中には、DIY Cultureというものがあって、彼いわくそれがロンドンで一番規模がデカくておもしろいらしい。二番目は天下のGold Smithで行われるRadical Book Fairというから信用できる。ちなみにそのDIY Cultureというイベントだけど、どうやら実は、今回僕が参加したZine Worldと同じく、Sofia Niaziさんが主催しているイベントらしいことがわかる。Zine Worldは彼女の運営するOOMKが主催だったのだ。OOMKとはムスリムの女性によって運営されているマガジンのようなもの。彼女自身もイスラム教徒で、ムスリムの女性におけるステレオタイプを払拭するような意図で、流行のファッションに身を包んだムスリムの女性が表紙になっていたり、日本ではGINZAの紙面で紹介されたこともあって、ちょっとだけ有名らしい。現在はissue5まで出ている。記念に僕も購入したが、内容も充実していてめちゃめちゃおもしろい。しかもこのクオリティとこの量感で5ポンドというから驚いてしまう。製本が凝っていたり、リミテッドエディションと謳っては法外な値段で売られるアート系Zineを見てきた僕としては結構なショックだった。高額な本、Zineもそれはそれで確かに存在すべきジャンルだけど、OOMKのように自分たちのスピリット、思想を少しでも多くの人に伝えたいという情熱も、忘れかけていた僕にとってはかなり心揺さぶられるものだった。Niaziさんも見た感じまだ若くて、何よりとてもいい人だったので、手に取った紙の束から彼女の人柄がにじみ出ているようで感動したのだ。イベントについてさらに言えば、全体的に日本のように何となく作りました感がなかったのも印象的で、フェミニズムレイシズムをテーマにしたメッセージ性の強いものが明らかに多かった。それも彼女のセレクトなのか、もしくはそういう文化なのか、はっきりとはわからないが、そうであるなら5月に行われるDIY Cultureで確かめてみようと思った。どうやらDIY Cultureには正規の出展者とは別の誰でも売っていいですよコーナーもあるとのこと。時間とお金があれば飛び込みで参加できたらと思っている。しかし誰でも売っていいですよコーナー(free communal table)、何と彼女らしいセンスなのだろう。

 

以下興味深かった他の出展者の作品をいくつかまとめた。

 

これがOOMKのissue5。79ページもあって内容も濃い。

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BOLO Paperというイタリアの出版レーベルから、ケバブをモチーフにしたZine。ヨーロッパらしい独特のセンスがある。

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こちらはsubjectというイケてるアーティストを紹介したりしててかっこいいマガジン。現在issue3を制作中とのこと。

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隣に出展していたいかついおっさんのコラージュ。名前を聞き忘れた。本業はBLACK EYE PRESSというRISOプリントなどを行う印刷屋さんらしい。

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ちなみにこれがそのおっさん。

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これはElla Margolinさんの出展していたもの。友人だというAmy HyamさんのZineがとてもよかった。LESBIAN SEX POSITIONというタイトルのもの。文字通り様々な体位のドローイングが並ぶ。

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こちらもAmy Hyamさんの作品。modern fasionというタイトルで、このページではスポンジをサンダルにしている。mixed media具合が秀逸。

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これも彼女のもの。ポルノ写真の足首だけを切り取っているらしい。余白に想像力が生まれる。おもしろい切り口。

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そしてこれはStefan AlexanderさんのFULLMOONというコミック。物静かで気の弱そうな青年といった感じの方で、この手のコミックを数点出展していたのだが、すべてに作品において、何も起こらない。静かに物語が始まるかと思えば、特に何も起こらず終わるという不思議な構成のコミックだ。

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